はんぶんこの巻(前編)






「さおとメロンパン食べたい・・・」




この言葉が事の発端でした。







お昼休み開始のチャイムが鳴る。
今日も購買に走るクラスメイトの姿を見送りながら、
私は荷物をまとめる。そして友千香の机の方へと向かう。

「友千香、ご飯食べに行こう」

「うんっ、そだね!」

いつものように私たちは食堂へ向かった。
途中通る購買会にはいつものように人だかりが出来ている。

私たちはそれを横目に通り過ぎていく。



「今日も戦が始まってますなー」

友千香がキョロキョロと辺りを見回しながらつぶやく。
私も頷きながら辺りを見てみる。
どの生徒も購買会に入ると目の色が変わるなんて噂はきいていたようだが
本当のようだ。いつも穏やかそうにしているクラスメイトも今日は獲物を狙う目つきで
購買会で商品を取り合っている。










私たちが食堂につくと、先に音也と真斗くんがいた。
音也はカレーライスを、真斗くんはそばを食べている。
音也は私たちを見つけるとぶんぶんと手を振ってここ空いてるよ!と
アピールをしてきた。


「遅かったな、今日は来ないのかと思った」

「ごめんね、購買会見てたら遅くなっちゃって・・・」


私がそういうと音也は「ああ、さおとメロンパンね」と言った。
私は首をかしげて音也の言った単語を復唱する。すると音也はびっくりした顔で
私をじっと見つめた。


「え?知らないの?」

「うん・・・」

「えー知らないの!?」


音也ががばっと身を乗り出して言う。
私は首をかしげて真斗くんに助けを求める。


「真斗くん、さおとメロンパンって・・・何?」

「本当に知らないようだな。さおとメロンパンは学園長先生が作っているメロンパンのことだ。
数に限りがあるため、販売するときは毎回争奪戦になるんだ」

「そうなんだ・・・」


そんなメロンパンがあるのか・・・。
しかも珍しいものだと・・・。
期間限定ものに弱い私が気にならないわけがない。
私はぼーっとしながらも頭の中ではどういうメロンパンなのか思考を張り巡らせた。



そしてぽつりとつぶやいた。



「さおとメロンパン食べたい・・・」





この私の一言が、後に彼をあんな目に遭わせてしまうなんて
私は思いも寄らなかった。




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120125
「食べたいのか・・・そっかあ・・・」