はんぶんこの巻(中編)





あの一言を聞かなければ、きっとこんなことにはならなかっただろう。



次の日、私はお昼休みになったので机に出していた教科書をしまって
いつも通り友千香を誘おうと席を立った。と、音也が後ろからものすごいスピードで
教室を出て行った。・・・一体なんなんだろう?


「ねえ、音也、なんであんな走ってるの?」

「さあ?」


友千香に尋ねても分からず、私と友千香は首をかしげながら食堂へ向かった。












「ぐへー完売でした・・・」

食堂へ行くと机に顔をべったりとくっつけてうなだれている音也がいた。
私はその音也の向かいに座ってのんびりと買ってきたいちご牛乳にストローをさす。


「どうしたの?あんな急に走って」

「・・・なんでもないー」


尋ねてもそういうだけで私は何も分からなかった。
ただ、音也の呼吸が中々収まらず、相当全力疾走したんだな、ということだけは分かった。




















次の日も同じ時間になると音也は教室をものすごいスピードで飛び出した。
真斗くんはやれやれといった様子でそれを見ている。
真斗くんなら何か知っているかもしれない。


「ねえねえ、なんで最近音也、走ってるの?」

「・・・何度言っても聞かないんだ。これが」

「?」

「無理だからやめておけ、と何度も言ってるんだが・・・一十木は聞く耳を持たない」

「・・・?」


何も答えになっていない。
私は頬を膨らましてとりあえず友千香と一緒に教室を出た。










その日も音也は息を切らして死んだような顔で食堂にやってきた。
私はそれを不思議そうに見つめる。
とりあえず、可哀想だったので飲んでいたミックスフルーツ牛乳を差し出す。


「音也、これ飲みな」

「ん、ありがと」


それだけ言って音也は私のミックスフルーツ牛乳を半分飲んだ。



「あ、」



と、隣で友千香が声を漏らす。
私は不思議そうに彼女を見つめた。



「なんか、分かったかもしれない」




彼女はそれだけ言うと私を見てにやりと笑った。







・・・?


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120201
「なるほど、そういうことね」