寂しいとか言っちゃいけないって思ってた。だから言わなかった。
寂しいっていう言葉は相手を縛り付ける最低な言葉だと思っていたから。
頑張っている彼を目の前にして一番言ってはいけない言葉だと思っていたから。
なのに、やっぱり言いたくなっちゃうときがあるんだ。

「グラハム」
「何だね?」

本から視線を逸らさないまま、彼は私の呼びかけに答えた。
私はソファーに座っている彼の隣に座り、ちょこん、と肩に頭を乗せてみた。
しっかりとした肩が頬に伝わってくる。私が肩に頭を乗せたのを確認するようにして
彼がこちらを見てきた。視線が行き交う。でもお互い何も言葉は交わさない。

「・・・」
「・・・」

とうとう我慢できなくなって彼がため息をついた。そして本を閉じ、テーブルへ置く。
私は寂しくなった頭をソファーの後ろへ思いっきり預けた。そして彼のため息を真似するように
わざとらしく、滑稽にため息をついた。

「・・・で?はどうしたいのだ」

あきれたように言う彼が可愛らしくて、私はソファーから頭を起こすと思いっきり抱きしめた。
彼はそっと私の腰に手を回した。

「グラハム」
「何だね?」
「・・・寂しいって言っていい?」
「もう言っているではないか」

力無く笑うグラハムにつられて私も少し笑う。
するとグラハムは腰に回す手を強めた。そして私の肩に頭を預ける。

「言わないって決めてたのにね」
「その割りにあっさりと言ってしまったようだな」
「そっちが言わせたくせに」


なんて子供みたいなやりとりをしながらも抱きしめる手は強まる一方だった。
そうして段々苦しくなって、一旦休憩と言わんばかりに手を緩めた。

「もう寂しくなくなったか?」

そんなわけないよ、なんていう目つきで彼を見ていたらそれが通じたのか
再び私を抱きしめてくれた。もう何度そう聞かれても満足なんてするものか。
本当はすごく、すごく寂しかったんだから。

私は彼に聞こえるか聞こえないか分からない声で「もっと」と呟いた。




You must not say…






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