秒針が心を打つ
「で、光」
「んー?」
「鏡夜先輩とモリ先輩とハニー先輩はどこ?」
「知らなーい。僕らだって今帰って来たんだし?」
階段を駆け下りて光について行く。光はいつもと変わらないぶっきらぼうさでその場をやってのける。それにしても、どうして部員が集まらないんだろう。今、光と探しているけれど、なんでだろう。あの部活がバラバラに行動なんて珍しい。こうやって光もバラバラを望むようになるのだろうか。
「なーにまた辛気臭い顔してんのー?大丈夫だって、先輩達いるからさ」
頭に力強く大きな手が振ってきた。私が「わ!」と驚くと光は悪戯そうな顔で私を見て笑った。なんだ・・・この人は心配しなくても大丈夫か。
私は笑って光を見上げた。光も同じように笑った。
「ああ、俺だ。・・・何?帰って来た?」
「崇、帰って来たって」
「ああ」
携帯をパタンと閉じる。鏡夜はハニー先輩とモリ先輩を見て笑った。
「帰って来たそうですよ」
「うん、早く会いたいなー行こう崇!」
「ああ」
そんな先を行く2人の先輩の背中を見て鏡夜は笑ってから溜息をついて空を見上げた。
(崩れる時か・・・)
「あれ?馨元気ないね」
ハルヒがティーポットを運びながら近くで座り込んでいる馨に尋ねる。
馨はダルそうに肩を抑えてハルヒを見上げた。そして溜息をつく。
「僕、が帰ってくるの待ってたよ。だけどさ」
「?」
「だけど、が帰って来た事で魔法が解ける時間がぐっと近づいたと思う」
「魔法?何それ・・・?」
「これはあくまで僕の仮説なんだけど・・・「ハルヒ!馨!見てみろ!!!」
環の声が教室中に響いた。ハルヒは顔をそちらへ向けた。馨は溜息をついてからだるそうに環を睨む。
「さっき姫がいたところに落ちていたんだが・・・これは庶民菓子の袋ではないか!」
「環先輩、ちょっとは手伝ってくださいよ」
「どうしようかにゃー?貰っていいのかにゃー?」
馨は何も反応しないでそっぽを向いた。何か、つっかかるものがある。というより、これからどうやって進んで行くのだろう。馨はそれが不安で仕方が無かった。
(僕だけでも魔法が解けないように協力するべきかな?)
「ねぇ、崇、きょーちゃん何処いっちゃったんだろうねぇー」
「さあな・・・」
ハニー先輩が時計台を見上げて言った。手にはうさぎのぬいぐるみを抱いて。
「それにしても、」
「?」
「この季節にあの子もよく来たねぇ」
「?」
「この時期は一番魔法が緩くなってる時期なのにね」
アガパンサス
(緩い魔法なら、鍵をかけて)
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120228