楽しかったり、嬉しかったり、人と会う時ってどうしてこんなに胸が弾むんだろう






















クレープ屋の前へ4人で並ぶと、女性の店員が顔を赤らめた。そうか、この2人ってホスト部やってるだけルックスはいいんだろう。私は身近すぎてどういうものなのか分かっていなかったから女性の店員のほう、っとした視線を見て初めて分かった。と、ハルヒもその店員の目線を見ていた。私と同じ事、きっと考えているんだろうな。




「ハルヒ、こっち来てよく見ろよ?」




光と馨が私達の袖を掴んでぐいっと自分の内側へと入れる。私とハルヒは並んで光と馨に覆いかぶさられた。




は何にするー?」



「私、チョコバナナにしようかな」



「じゃあ、僕マロンクリームにしようっと」





あ・・・私は顔を上げて光を見上げた。もしかして、同じの食べたかったのかな・・・?遠慮、してくれたのかな?だったら悪いなあ・・・そう思ってじっと見つめる。すると光はその視線に気づいてか私を小さな子供を見るような優しい顔で見下ろした。





「何?」



「いや、遠慮しなくていいんだよ?同じの食べたいなら一緒に同じのにして「バーカ」




光は口を尖らせながらポケットから財布を取り出した。そして小銭を確認しながら言った。





「そーじゃないって。僕の利益の為なんだから」


「は?」




光は私の分まで頼んで店員が動きだしたのを見てからこちらを見てにやりと笑った。私はその笑いの意味が分からず顔を傾ける。






「僕は、からチョコバナナを貰うの。それで僕はマロンクリームを頼む。ほら、一石二鳥でしょ?」




「〜〜〜っ、光!」





急に恥ずかしくなった。折角、いい方向へと解釈したのに、それは無駄だった。私は光の背中をばしっと叩いた。光の痛そうな声が聞こえる。そしてそれを私はつんとした顔つきで見てからそっぽを向く。すると、女性の店員がクレープを差し出してきた。私はおそるおそる手に取る。そして光を見上げる。絶対に、あげないんだから!





「ハルヒは何にしたのー?」




「イチゴクリーム。これがおいしそうだったから」




「馨は?」




「僕はブルーベリー」








光が2人に向かって話しかけている。こうしてみれば、光はやっぱり尖ってたものがなくなったみたいだ。私はクレープを頬張りながらそんな光を見つめる。一方の馨に目を移して見ると馨もまた優しい顔つきだ。やっぱり、これはホスト部の影響かな?環先輩が勧誘してくれて、部活に入って、藤岡君と出会って・・・・・





















あれ?





















藤岡君と出会ってからの2人って・・・

























?」




ふと名前を呼ばれた。我に返った私は前方を見つめた。馨が心配そうに見ている。他の2人も同じように。





「あ、ごめんね。ぼーっとしてた」




「気をつけなよ?、迷子になりやすいんだから」




さんが?意外だなぁ・・・」






馨が愉快に笑ったそしてハルヒに向かって小さく「ウソ」と笑った。ハルヒはもう、と愚痴を漏らして馨の隣に並んで歩き出した。と、光が立ち止まった。そして私を振り返る。一瞬、私と光の間の時間が止まった。






「歩こうよ、置いてかれる」




「あ、うん」






せわしなくパタパタと小走りして光の隣に並ぶ。こうすれば、ハルヒと同じ。って、なんだか訳の分からないことを自分でもしていると思った。だけど、私はきっと焦っているのだ。きっと、光と馨に置いていかれるんじゃないか、と。






、それ美味しい?」





一口しか食べていないクレープを指差して光は言った。私は静かに頷いた。光は「そっか」と笑いながら言った。そして私ははっと思い出した。クレープは光に食べられないように、守っておかなきゃ、と。思わず、クレープを握る手に力がこもる。それを見ていた光は大笑いした。私はそれを怪訝そうに見上げる。



、マジでクレープ守ってるし。ウケる!」




「五月蝿いなぁ」




「でもさ、マジで一口でいいからちょうだい」




「嫌だ!人のこと笑っておいてよく言うね」







冷たく言い放つと光は少し歩く速さを遅くした。私が少しだけ先を行く。ふっと振り返ると、光はにやりと笑って私の歩く速さについてきた。






「じゃあさ、ゲームしよ」



「何?」



「僕が賭けに勝ったら一口貰う。んで、僕が負けたらはくれなくていいよ」



「いいよ!負けないんだから」






私がそう意気込むと光は笑った。なんだか、企んでいるな・・・でもこうやって早く気づけているから悪戯には騙されない自信がある。





「で、ルールは?」



「んーと・・・あ!、あれ見て!」



「え!?」





ピンと指を差された方向へ顔が行く。と、その時私のクレープを持つ手に誰かの手が触れた。そして、私の手がその方向へと引き寄せられていく。顔をを戻してみると、そこには光がピースをしていた。





「・・・まさか・・・」




「ご馳走様っ」




「食べたの!?」





光は頷いてうれしそうに口元を動かした。ダメだ、やっぱりダメだ・・・私は悔しくてそっぽを向いた。と、光が私の肩をぽんぽん、と叩く。



「いる?」



クレープをずいっと差し出した光に私は戸惑って後ろへ下がる。




「い・・・いいよ!」



クレープを押し戻してそっぽを向く。おいしそうだけど、食べたら光の思惑通りだ。



「食べろっての!我慢は美容に良くないよ!」



私の頭をぐいっと自分の方へと寄せる光に私は首を振って拒んだ。だけど、光の笑い声と力に負けて再び目の前にクレープ。



「美味しいよ?」



「う・・・」




朝から思ってた。普段ならやらないことを今日の光はなんの躊躇いも無くしてくる。それに戸惑ってるなんて本人には言えないけれど、内心、私、今すごく吃驚してる。同時に嬉しかったりもする。こんな気持ち、光が読み取ってしまったら私はどうしようか。そんなことを考えて光をじっと見つめる。光はほら、ともう一度念を押した。私は思い切ってそのクレープに一口だけ、そう思って頬張った。










「な、美味しいでしょ?」




「・・・う、うん」











「素直になればそれでいいのに」光は笑って言った。私はそんな風に言われて恥ずかしくて光に目線を合わせられなかった。と、ふと光がぴたっと立ち止まった。私が見上げると光は私に遠くを指差しながら言った。






















「もしかして・・・はぐれた?」
















「え?」
















気づくと、前に馨とハルヒの姿はなかった。私と光は顔を見合わせた。






















こんな展開、前にもあったような・・・
















コリアンダー


(曖昧な気持ちに君は)


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120314