夜空に瞬く星のように、いつかきっと・・・




















肌寒く感じて目を開ける。そして視界に広がったのは真っ暗な空だった。それは夜だった。そこでやっと理解できた。あの後、光の肩で寝てしまったのだ。目線を横にずらして見ると、そこには光の肩がちゃんとあった。私はゆっくり姿勢をただそうとした。が、上に何か乗っている。きっとこれは光の頭だ。光も寝ていたのだろうか、いや、この感じだとまだ寝ているだろう。私は動くに動けなくて、そのまま固まった。


あの時、光に話を聞いてもらってそれで安心して眠ってしまった私。涙の後が少しだけ肌を引張っているようだ。手をゆっくりと自分の頬へ持っていく。やっぱり、肌が少しだけいつもと違う。そして腕時計に目をやった。もう7時だ。雨もさっきまで降っていたが止んでいる。光が隣にいるということは、馨とハルヒはどうしたのだろうか・・・帰った?いや、そんなはずはないだろう。馨は光と一緒に帰るしハルヒもきっと・・・そしたら、早く2人に会わなきゃいけないのではないだろうか・・・私はがばっと光の頭のことなんて忘れて立ち上がって携帯を取り出した。ごつっと鈍い音がする。下を見てみると光が唸って頭を支えていた。




「ご、ごめん!」



「ってぇ〜・・・って、あれ?今何時?」



「し、七時・・・」



「・・・んー・・・って、え!?!?マジで!?」






光は身を乗り出して私を見上げる。私は頷きながら、携帯を押した。馨にちゃんと、かかればいいけれど・・・




その願いが届いたのか、電話に出る音が聞こえた。私はその音を聞いてすぐにいっぺんに喋りだした。






「もしもし、あのね、馨今日はごめんね、また今度ちゃんと謝るから!!!んで、悪いんだけど、今何処にいる?私達、近くの公園にいるんだけど来てくれない?」




「いいけど、なんでそんなに焦ってるの?」




馨は半笑いで言った。電話越しに足音が聞こえる。私はそんな音は気にしないで話を続けた。




「焦ってないよ、ただ、馨置いて行っちゃったし・・・そ、そうだ!ハルヒは?」



「ハルヒは、帰った。ってか送ったよ」



「そうなの・・・?ご、ごめん・・・」





ハルヒはどんな思いで帰ったのだろう。私は不安で不安で仕方が無かった。学校に行ったときに謝っておかなければ・・・





「いいよ、っていうかそれで?どんな公園にいるの?何がある?」



「えーっとね、砂場とブランコと滑り台と、なんだかあんまりピンとくるものがないな・・・あ!パンダがある」



「ははっ、わかんないや、さっぱり!」



「だよね・・・じゃあ馨先帰ってていいよ?私車呼んで光送るから」



「んー?や、光と一緒に帰りたいな」



「じゃあ、馨さ、待ち合わせしてた場所に来て。私達もそっち行くよ。」



「わかった。じゃ、待ってる」





私は頷いてから電話を切った。そして心配そうに見上げる光を見下ろした。






「馨、大丈夫だった?ちゃんといた?」



「いるよ。大丈夫」






よかった・・・と胸を撫で下ろす光を見て私はふと思い浮かんだ。光は馨のことをすごく心配している。私が大丈夫、って言ったらすごく安らいだ顔をするし、馨のことを聞くときもすごく必死で・・・、これって、馨にも言える事だよね?だとしたら、一つ解けたかもしれない。馨の言った、5つの願い事。私は笑ってもう一度光の隣に座った。



























闇の中をゆっくりとした足取りで歩く僕にただ影だけがつきまとう。僕はそれを気にしないで街灯を見上げて溜息をついた。


今日、僕は後悔をした。それは、を光にとられてしまったからだ。が泣いているのに気づくだけじゃなくて、光は行動にうつした。僕はちっぽけな言葉しか言ってあげられなかった。確実に、光は進歩している。そのレベルアップが魔法を解いてしまうのに気づかない光はこれから先もきっと進歩し続ける。僕は止めるべきなのか?光の幸せが僕の幸せ、その思考をモットーにしている僕にしてみれば、止める権利はない。だけど、のことを思うと、僕は光を止めるべきだと思ってしまう。こんな、アンバランスな気持ち、一人で抱えるのは初めてだ。僕はきっと、光に嫉妬しているんだ。ハルヒが言ってたように、大事なことはすぐ目の前にあったんだ。僕はやっと今、ここで気づけた気がした。






「ダメだなあ・・・僕」






僕は小さく弱音を吐いて先ほどよりもテンポを上げて歩き出した。







































「馨!」




遠くからわかった。私が見つける前に光はとっくに見つけてしまい、私を置いて走っていく。私はそれに続いて小走りして馨のいる場所へ向かった。馨はいつも通り笑って抱きつく光を何の変哲もなく、抱きしめた。





「光、大丈夫だった?寒くない?」



「馨こそ、ごめんな。置いていったりして。ハルヒにも明日謝らなきゃ」





馨は抱きしめる手を緩めて私に近づくように手招きをした。私は言われる通り馨の方へ歩き出す。すると、馨は私の頭を撫でた。




も、大丈夫?」



「うん・・・ごめんね、馨・・・置いて行ったりして」




私が俯くと馨は笑った。そして撫でていた手を一旦離すと今度は、私の髪をくしゃくしゃっと掻いた。私はそれを溜息交じりで見上げる。よかった、怒ってない・・・でも、今日みたいな態度はこれからどんなことがあってもやめよう。





「いいよ、だけの所為じゃないもんな」





















あれ




この言葉、光も言ってたな・・・私は馨を不思議そうに見上げた。馨の顔もだんだんと?マークを浮かべ始める。





そうだ、2人は双子。似ている所だってあるんだ。私は2人を同一視することができなかった。だからこそ、同じようなことをする2人がやっとちゃんと見れた気がした。私はちょっぴり感動して力無く笑った。








「やっぱり、光と馨って双子だね」






「「何、言ってんの?」」






また、言葉が重なる。今までそれは見た事があったけれど、だけど今日は一段と新鮮だ。私は笑って2人を直視できなかった。2人は案の定顔に?マークを浮かべていたけれど、そんなのお構いなしだった。





「さ、帰ろう?のおかーさんも心配してるでしょ」



「そうそう、それで、後でに怒られるの嫌だしね」



「怒らないよ、何言ってるの」



「まぁー、いいや。今日は歩いて帰ろうよ」






馨は笑って私と光の顔を交互に見た。私が丁度携帯を取り出して電話を呼ぼうとしていたのだが、それを優しく制した。私は頷いて携帯を閉じる。すると光はぶっきらぼうに私に手を差し出してきた。私は何もわからないまま、とりあえず手を差し出す。すると、先ほどと同じように温かく包んでくれた。私は馨にもう一方の手を差し出す。馨は一瞬躊躇ったけれど、笑ってぎゅっと握ってくれた。
































温かく、心地よい光と馨の温もりはそっくりだった。























































と別れた後、光と馨は少しだけ間を置いて歩いた。光が前方を行く中、馨が小さく光の名前を呼ぶ。光は無言で振り返った。



「あのさ、と何話してたの?」



「公園で?ああ・・・別に。今日のことはおあいこだってことと・・・」



「ことと?」



光は立ち止まって馨を振り返った。馨はぐっと光に見えないところで拳を握り締めた。




に、ありがとうって言った」




「なんで?」




「なんでって・・・がなんでも話して、って言ってくれたから・・・泣かないでって言ってくれたから・・・」







馨は俯いた。何があったかわからなかったけれど、光の顔が少し火照って見えたから。






「何それ」




「わかんない、僕もよくわからないけど、ほっとしたんだ。あの時」






光が胸をぎゅっと抑えた。馨は顔を上げて笑った。






「よかったね」

























もっと綺麗な音色で奏でていたかった気持ちに不協和音が邪魔をする

















センニチコウ


(
崩れる音が鮮明に)






----------------------------------------------------
120317