どんな時だって、赤じゃなくて、ピンク色だった。





















「は!?」




私は部屋中に響くほどの大きさで声を上げた。それに冷静に続く、電話越しの双子の声。私はその冷静さを分けて欲しいと思いながら耳を傾ける。




「だからさ、、一回で聞き取ってくんない?」



「明日から移動教室・昼食等はぜーんぶ僕らと一緒に行動する事!わかった?」




いきなり電話をしてきたかと思うとこの有様だ。私は戸惑って口ごもる。




「何それ!?いやだ!」



「「ダメ、僕らの遊びにつきあってもらうんだから」」



「い・や・だ!」




電話切るよ?と、大声で言うと2人は笑って切ってどうぞ、と言ってきた。そしてその後微かに光が「何度でも電話してやる!」と言っていたのが聞こえ、私は溜息をつく。すると2人は話し始めた。




「うん、だからそういうこと」



「ってことで、また明日!」



「いや、まだ何も解決してないし・・・」



「「何ー?まだ僕らとお話してたいのかな?ちゃんは」」



「切るよ!?」




恥ずかしくなって声を上げると光と馨はけらけらと笑った。




「「ウソウソ。おやすみ、」」




「・・・おやすみ」




電話を切って廊下にいる家政婦に渡して部屋へ戻るとベットにダイブした。そして息を止めていたときのように息を吐き出した。落ち着く心と、熱い顔。2人に悪戯されている時って悔しい気持ちと嬉しい気持ちと楽しい気持ちが混ざっている。それはずっと前から同じなのに未だに慣れない。



「・・・明日から大変だろうな・・・」




楽しいってちゃんと思っている。だけど、精神的にテンションについていけないのだ。それを明日からどうやってテンションを保っていこうかそれを考えるだけで頭がガンガンしてきた。そしてそっと気持ち良くなって重々しく瞼が下降してくる。そして、私は視界に景色が見えなくなっていった。

























「「や!おはよ!さぁー、一限目は移動教室だよ。道具を早く持って!」」



「HRあるじゃん・・・」




朝からやはりハイテンションだ。私は溜息をついて突っ込むと、彼らは笑って人差し指を立てた。




「ふふん!今日はー」



「HRカットなんだなー!」



「げ・・・本当に?」



「「これぐらい把握してるから!僕ら」」





ブイサインを向けてくる2人を見てげっそりとした気分になった。私は溜息をついて2人を少し押して席へ向かおうとする。すると、2人は私の腕を掴んでこちらを見た。





「「早く来てネ」」




来ないなんていわせないよ?それが目を見るだけで伝わってきた。私は後ろに一歩下がって冷や汗をかいた。














席に行って一旦座ると、光がこっちをギロりと睨んだ気がした。私は焦って席を立ってカバンを開ける。ノート・教科書・ペンケースを取り出してまとめる。すると今度は背中に馨の視線が刺さってきた。馨は私と目を合わせるとにっこり笑った。でもその笑いは純粋な笑いなんかじゃなくて、言葉に置き変えるとやはり光と同じで早くしろ、というオーラに包まれていた。


私はパタパタと走って廊下に出た。光と馨は無表情で私を見下ろした。




「何・・・?」



「「遅い」」



「別に遅く無いじゃん!」



は無駄な行動が多すぎ」



「だからカモにされるんだよ」





意味が分からないまま私は2人の後をついていった。そういえば、2人の背中が並んでいるのは久しぶりだった。私は少し感動してそんな2人の背中をじっと見つめた。こんな風に、大きくて頼れる背中だったっけ?ずっと前までは、少し寂しさを背負っていたのに・・・2人が背負う荷物も少なくなったみたいだ。





「・・・・・・あのさあ、」



「人の背中真剣に見つめないでくれない?」




「え!?」




我に返ると、光と馨が怪訝そうに私を見ていた。私は急に恥ずかしくなって俯いた。なんだか、変に思われたかもしれない・・・どうしよう・・・だが、光と馨はははっと笑って私の頭に手を乗せた。



「「そんな背中なんて見てたってつまんないでしょ?」」



そしてその手で私の頭を支えてぐいっと光と馨の間へ押し込まれる。これで、私も2人と並んでいる。私は顔を上げて交互に2人の顔を見た。2人は余裕そうな笑いをして口々に言った。



「別にさ、ホスト部だからって僕ら遠い存在なわけじゃないよ?」



とはホスト部以前にちゃんと繋がってるんだから」



「そ、ホスト部は繋がりが増えたって解釈すればいいんじゃない?」



「考えすぎって前言ったよね?」




私は恥ずかしくなって頷いた。と、ふと前に目線をやると向こうから見慣れない中等部の制服を着た少年がパタパタとこちらに向かって走ってきた。私はすぐに気がついた。それが、モリ先輩の弟悟君だと。声をかけようと手を上げて振る。そして名前を呼ぼうとした瞬間、私の右に居た光が急に私の方へ来た。




「何!?」



「曲がるからそっち行って」



「え!?だって、教室は真っ直ぐに「ほら、何してんの?こっちだよ」




馨に手を引かれバランスを崩して角へ曲がる。そして馨は私を柱の方へ追いやる。馨はその角から顔を少し覗かせている。




「・・・何してんの?光・・・」



「撒いた?光」



「うん、なんか困った顔してる」





馨はよかった、と声を漏らして私をじっと見つめた。私は悟君に声をかけたかったのに、バットタイミングだ・・・と少しショックを受けていた。光と馨は相変わらず楽しそうだ。



「だから移動教室はあっちでしょ?行こうよ」



「「ちょ、っと!」」




すっと馨を抜けて光も抜いて角を曲がる。するとやっぱり、私を探してくれていたのだろうか。私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。




「悟君」



さんっ!おはようございます!」



「おはよう。どうしたの?こんなとこまで・・・」



「いや、昨日さんがくれた飴が美味しくてお礼をしに・・・」



「そんな、お礼なんてしなくていいんだよ?お礼にお礼してどうするの?」




私が笑って言うと悟君は笑顔で首を横に振った。私は不思議そうに悟君を見上げる。




「これ、あげます」




渡されたのは小さな巾着だった。私は顔を上げて悟君に目で訴えかけた。悟君は笑って頭をかきながら言った。




「これ、さんに使ってもらえたら嬉しいです」



「いや、そんないいよ!って・・・あれ?」



気がついたらもう廊下に人影はなかった。いっちゃったのかな・・・そう思って私はもう一度悟君がくれた小さな巾着を見てからポケットへそっとしまった。そして振り返ると光と馨がつまらなそうな顔をしてこちらへ向かってきた。



「光、馨・・・」



「ふーん、やっぱ飴あげたんじゃん」



「そうだとは思ってたけどね。のウソバレバレ」



2
人はにやりと笑って私を指差す。私は俯いて小さく呟く。



「ごめんね・・・」



「「別にー?も少し悪女っぽいとこあるってことがわかったしいいよ」」



「何それ・・・!?」



「「いいじゃん、お互い全部知ってるほうが。この際僕らだって隅々まで教えてあげるよ?」」




いつの間にか彼らは私の耳元でそう囁いていた。私は顔が熱くなるのを俯いて拳を握り耐えた。そして2人を押しのけ先を歩いた。




「「待ってよー!ウソだって。、怒るなよー?」」




















怒ってる、なんかじゃない。























「悟、お前何処に「やっぱ天使だー!」



いつもの真面目な顔とはうって変わって悟の顔はとろけそうだった。靖睦は気持ちわるいものを見たかのように顔をしかめてそれを見据える。悟は椅子に座ると、とろけそうな顔をしてうなだれた。



さん、最初見た時から天使だと思ったんだー」


・・・?ああ、ホスト部にいた」


「靖睦もそう思わないか!?天使だろう!あの人は!」


「ふーん、それでお前は昨日部活をサボったわけか」



靖睦は教科書で思いっきり悟の頭を叩いた。悟は頭を抱えて机に伏せた。




「〜ってぇ・・・」



「お前というやつがなんで女の為に部活をサボってるんだよ!」



「いや、あれは困っている人を助けた気分で・・・つい・・・」



「剣道部、困ってたの俺は見たぞ!」



「げ・・・どうしよう・・・」



「知るか」





靖睦は吐き捨て席を立つ。悟はそれを少しだけ見てから再びうなだれた。






「でも、気持ちって不可抗力だと思う・・・」





悟の言葉に靖睦は不思議そうな顔をした。









オミナエシ


(ピンク色が濃くなった、視界が広くなった、それは全部君の所為)


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120321