新しい家族ができた。
嬉しくて嬉しくて私は嫌な事なんて考えられなかった。






















「「、弱すぎ。もう3回目だよ?大貧民」」



「仕方ないでしょ!!そんなのは・・・」



「こらこら、あまり可愛い妹ができたからっていじめるな」



「「殿だっての前で鼻の下伸ばしてたじゃん」」



「なっ・・・そんなことはしてないぞ!」





光と馨と環が立ち上がって睨み合う。私は苦笑いをしてトランプをまとめた。隣にいた藤岡君が手伝ってくれた。私は「ありがとう」そう小さく言ってトランプをまとめていった。




さん、今日は楽しかったですか?」



「うん、楽しかったよ。最初は、皆に馴染めるかわからなくて不安だったけど、やっぱり変わってなかったよ。安心した」



「そうですか。みんなさん待ってましたよ。自分もさんが戻ってきて、救われた気がします」



「そんな、大袈裟な。でも、ありがとう。これからもよろしくね」



「はい」





藤岡君は笑った。私もつられて笑う。相変わらず上では環先輩と光と馨がふざけているけれど、そんなの気にせずに私は嬉しさに浸った。と、ふと上から声が降って来た。顔を上げるとそこにはファイルを持った鏡夜先輩がいた。



、環から聞いたんだが仕事、やりたいか?」



「はい?」



「お前、理事長に何か言われたはずだ。それが気にかかるなら部活で何か仕事をしていれば問題ないだろう?」



「あ、はい・・・。でも、私がやる仕事なんてあるんでしょうか?」




鏡夜は考えた。すると鏡夜の後ろで会話をしていた3人が急にぴたりと止まり。光と馨は私の隣にやってきた。




「へぇー



「部活で仕事するの?」



「でも、まだ何やるかは決まってないよ?」




私がそう言うと2人も考え込んだ。環先輩は周りを歩きながら口元に手をやって考えている。私も何があるだろうか・・・と考えたが、いいのが浮かばない。























「じゃあ、お菓子選ぶお仕事してよ!ちゃんのお仕事それがいいと僕は思うよー」





窓際に座っていたハニー先輩がうさぎのぬいぐるみを動かしながら言った。皆の視線がそっちへ行く。モリ先輩は口を開いた。




が選べば客の好きな味もわかる」




「「そうだよ!も女の子だし、女の子好みの味だってあるから!僕らにそれわからないし!」」




「いいですね、それは。鏡夜先輩もいくらか楽になるんじゃないですか?」




「うむ、はお菓子が好きだからな」




「とのことだ、俺も別に構わないが、、お前はどうだ?」





私は大きく頷いた。お菓子は好きだし、果物も好き。少しでお客様に美味しいと言って頂けるように丁寧に選びたい。服選びの感覚で。私は笑ってハニー先輩にお辞儀した。ハニー先輩は手を横に振って「いいよ、いいよ」と笑ってくれた。






















私の第一歩が始まった。
























もうすっかり外は暗くなっている。私は立ち上がって帰る素振りを見せた。すると後ろからぱたぱたと2人がついてきた。振り返るとそれは光と馨だった。




「「一緒に帰ろうー?送ってやるよ」」




「あ、ありがとう」




送迎の車は簡単に出せない。今日久しぶりに家に帰るのだからいきなり送迎車を引っ張り出すなんてもってのほか。私は頷いて2人と並んで歩いた。ホスト部の部室を出ると中の熱気に比べて少し冷たい風が流れていた。その風に戸惑って顔を俯かせると双子は笑い出した。それが気になって顔をあげると、2人は手を同時に出してきた。



「「お足元に気を付けて。お姫様」」




私は笑ってその手を握り締めた。2人の手の感触が伝わる。3人で手を繋ぐというのは無理がある気がするけど無理じゃなかった。まぁ、これは手を繋いでいるというよりは手を重ねているような。車まで辿り着くと私達三人ははぁーと溜息を同時についた。それに笑う私達は昔のままだった。あの、無邪気な心が永遠に存続すればいいのに、そうやって祈ってしまうほど。留学する前のあの喧嘩はなんだったのだろう、今になればあんな記憶全てチャラにしたくなる。





、明日から普通に来るんでしょ?」



「うん」



「じゃ、また悪戯できるってことか!」



「悪戯しなくていいよ!」




「いや、大きいぞー?久しぶりのいたずらは」



、泣いちゃうかもね」







笑う2人に溜息をついてそっぽを向く。すると2人はつまらなくなってかぶーぶーと文句を言いはじめた。私は仕方なく、振り向く。すると、げんきんなこの2人は悪戯そうに笑う。こんな笑みにさえやすらぎを感じてしまう。私はほっとして胸を撫で下ろす。家になんか、帰りたくない。ずっと、このままでいい。そう思えば思うほど時間は早い。気づいたらもう家に着いていた。私はできるだけゆっくりと車を降りた。そして光と馨に手を振った。すると2人も手を振ってくれた。最後のやすらぎだ。私は向きを変えて門まで歩き出した。







「「!!!バイバイ!!!また明日な!!!」」





と、大きな声が聞こえた。振り返ると2人が窓から手を出していた。危ないよ、そう思って笑った。だけど、今ああやって言ってくれてやっと気づいた。明日から、毎日会えるじゃない。と。あの留学があってからか、なんだか別れるときはすごく辛い。明日になれば会えるのに、そう言い聞かせているのに。そう思っているともう門まで私は辿り着いた。だけど、その門には人影が一つだけあった。その人影は私の方を見つめた。





「・・・お母さん?」




























「ねぇ、光、、殿の家族に入ったね」



「そうだねー、ったくいい加減にしてほしいよな」



「うん、でもさ、それよりもおもしろいことになったよね。殿ってば」



「あれだよな」



「「二股!」」



「いくら、ハルヒを我が子にしてその感情を抑えてるとはいえ、まで・・・」



「馨、僕らしばらくつまらない思いはしなそうだよな!」






2
人は車の中で大きく笑った。




























ヒメハギ





(気を付けて、ジョーカーはいつも傍にいるよ!)






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120304