「音也」
名前を呼ぶと、音也は満面の笑みでこちらを見てきた。
その笑顔がまぶしくて思わず目を背ける。すると音也の不満の声が聞こえた。
「なにその態度ー?呼んだのになんにもなし?」
我侭を言う子供のように音也は膨れっ面で私の顔を覗き込んできた。
私は思わず声を上げて一歩下がる。
「なにそれ、そんなに嫌?」
「嫌じゃなく・・・て」
「じゃあなんで?」
分かってるくせに言葉で言ってくれないと信じない、みたいなスタンスだってことは
前から分かっていたけれど、こんなにそれが厄介なものだったとは・・・。
私は目を泳がせながら音也の袖をきゅっと引っ張った。
「音也が、まぶしいから」
こんなべったべたな言い方したくなかったけど、彼に合う言葉がこういう類のものしか
見つからないんだ。私がそう言うと音也は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
何その反応。普段みたいに「ありがとう」って言ってくれたっていいじゃない。
「音也?」
私が名前を呼ぶと音也は恥ずかしそうに笑った。
「にそう言われると恥ずかしいもんだね」
「なんで?って聞いたの音也だけどね」
私がそう言うと音也は私の手をぎゅっと握って歩き出した。
本当に、一緒にいると恥ずかしくなっちゃうことばっかり。
Honteux!
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120121